明日の命をつなぐもの。その基本柱のひとつに、食事があります。とりわけペットの場合は、飼い主さんが食事を選択して与えるわけですから、ペットの健康は飼い主さんにゆだねられていると言っても、過言ではありません。
今回は、毎日に欠かせない食事の中で、特に注目したい「犬に必要な栄養素」について、クローズアップしてまいります。
進化の歴史からひも解く、犬の栄養素
太古の時代にさかのぼり、犬のルーツを見てみましょう。犬の祖先はオオカミであった、というのは、みなさまご周知のとおりですね。数々の研究の中でも、それは事実だという論文結果が多くありますから、犬の祖先はオオカミだったという説は間違いなさそうです。
オオカミだったころの彼らの食生活はどうであったかというと、集団で自分たちよりも大きな獣を狩り、群れで分け合って食べるというものでしたので、この時代の犬の祖先は「完全肉食」でした。(実際には肉の他、内臓、小骨、腸内の残存物も摂取し、他にも木になる果実なども食していたようです)
完全肉食からの進化
肉を切り裂くための大きな犬歯は、獣の肉を切り裂くための機能として存在し、イエイヌから変化を遂げた現代の犬の歯にも、その名残が脈々と受け継がれています。これは草食獣には見られない歯の構造として、犬が完全肉食であった証明ともいえます。
一部のオオカミがイエイヌへと分岐して共存生活を営むようになると、食生活も徐々にヒトと同じような雑食性寄りに変化をしていきます。もともとは完全肉食であったものの、ヒトの食事の一部を分けてもらうように、より、ヒトと共同生活をしやすいように、イエイヌ自身が消化に関わる一部の機能を順応させたと言われています。
そうした進化の結果、現代の犬たちは「雑食性肉食」というように分類されています。もともとは雑食ではなかった彼ら、しかし、アミラーゼを多く持つように体内変化したことで、デンプンを消化できる機能が備わり、雑食も受け付けられる体へとなったわけですね。
犬に必要な栄養素
犬の体の維持に必要な三大栄養素は「タンパク質」「炭水化物」「脂肪」です。そして、「ビタミン」「ミネラル」「水」を加えて、全部で六大栄養素というわけです。では、それぞれの栄養が、犬の体にどのような働きをするか、ここから説明してまいります。
水
犬だけでなく、すべての動物にとって、水は必要不可欠です。動物は体脂肪がほとんどなくなったとしても生きられると言われますが、体内に含まれる水分量うち、15%を失うと、生命維持ができなくなり、死へと至ります。
タンパク質
健康な皮膚、筋肉、被毛、ホルモン、抗体などを作るアミノ酸。それらを作り出すのはタンパク質です。アミノ酸は約20種類あり、多くは犬のカラダの中で合成されますが、体内で作ることができない「必須アミノ酸」は、食べ物から摂らなければなりません。
脂肪
脂肪って必要なの?と、驚かれた方もいらっしゃると思います。でも、脂肪は犬が活動するためのエネルギーです。1グラム当たりで供給できるエネルギーは、タンパク質や炭水化物に比べて約2.5倍の力があり、最も効率の良いエネルギー源と言えます。また、脂肪は生命体温の維持、脂溶性ビタミンの吸収を助ける必須アミノ酸の供給を促します。
炭水化物
炭水化物はエネルギーの供給源です。犬の体内に含まれる消化酵素によって「糖」と「繊維質」の二つに分解されます。繊維質は便秘や下痢の予防、血糖値の上昇を抑えるのにも一役かっています。
ビタミン
体調を整えるビタミン。犬の体内では作れないので、食べ物から摂取しなければなりません。ビタミンB1、B2、B6、ビタミンA、C、Eなどの14種類が必要ですが、どれも手軽に食べ物から摂取できるので、反対にどれかのビタミンが過剰にならないように気を付けなければなりません。
ミネラル
体液のバランスを調整してくれるのは、ミネラルです。犬に必要なのは、カルシウム、リン、ナトリウム、亜鉛などの11~12種類。必要な量はほんの少しですが、それぞれの摂取バランスが崩れると健康が保てない場合があるので、バランスを崩さないようにすることが大事です。
特に注目したい栄養素を少し詳しく
タンパク質
犬のたんぱく質の必要摂取量は、ヒトの約4倍。犬の食事を考えるときには、たんぱく質の量に注目することが欠かせません。
タンパク質は被毛や皮膚などをつくる栄養ですから、不足すると、犬は発育の遅れや、体重減少。各機能の低下を招くことで知られています。
タンパク質が不足すると、筋肉量が減るために、基礎体温を維持することが難しくなります。体温の低下は、様々な病気のきっかけになることが多いので、注意が必要です。ガンの発症にも関わるといった論文もあります。
また、筋肉量が減少すると関節を支える力が弱くなります。そのため、関節痛や関節炎の恐れがあり、全体的に元気のない、寝ることが多いような状態に陥りやすくなります。
それが進めば、寝たきりになってしまうという結果につながることも。
タンパク質は大きく分けて2つの種類があることも知っておきましょう。動物性タンパク質と、植物性タンパク質です。このうち、動物性タンパク質には「必須アミノ酸」というものが含まれています。ちなみに、ヒトの必須アミノ酸は8種類。犬は10種類ですから、
食事から積極的に取り入れる必要があります。(犬に必要なアミノ酸の種類は以下。アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン)
ミネラル
タンパク質の他に、ヒトの栄養素よりも多く摂取する必要のある栄養素には、ミネラルがあります。中でも、カルシウムについてはヒトの約24倍、リンについてはヒトの約20倍もの量を食事から取り入れるのが望ましいと言われています。
さて、このカルシウム。具体的にはどんな食品に含まれているのでしょうか。手軽に取り込める食材として代表的なのは、ほうれん草、モロヘイヤ、大豆、ヨーグルトがあります。
他に重要なミネラル分として、海藻や鶏卵に含まれる、リン。バナナなど果実に含まれる、カリウム。ひじき、ゴマ、そば、納豆などに多く含まれる、マグネシウムも大事な栄養の一つです。タンパク質や赤血球の合成に必要な葉酸、ビタミンB12など、ここへ上げただけでも、ずいぶんたくさんの栄養があります。これらをまんべんなく摂取しないとならないなんて…。栄養を考えることがいかに大事かがわかりますね。
肉の持つ栄養素
イソップ童話やディズニーアニメで登場する犬たちは、どのキャラクターも決まって、骨付きの肉が大好きです。でも、これには理由があり、やはり犬たちにとって「肉」というのは栄養素の宝庫。ポパイがほうれん草を食べると元気がみなぎるように、犬もまた、肉に含まれた栄養を摂取することで、疲労回復や滋養強壮へと導かれていきます。
肉に含まれるタンパク質には、アミノ酸の多くが含まれています。近頃では肉の代用品として、一部の方たちからは植物性由来のタンパク質が好まれることもありますが、肉にはタウリンや、アルギニン、メチオニン、リジン、トリプトファンが含まれています。免疫力の低下を防ぐためにも、ぜひ愛犬の食事には肉を多く取り入れてほしいものです。
ポピュラーな肉の種類
鶏肉
鶏肉は日本人が好んで食べる肉のひとつ。カロリーが少なめで、良質のタンパク質が含まれています。このタンパク質には、イミダゾールペプチドと呼ばれる、アンセリンやカルチニンといった機能が備わっています。ペプチドが体内に摂取されることで、熱量が上がるため、代謝にも働きかけて内臓の働きを活発化させます。
手羽先や手羽中にコラーゲンが多いことはよく知られていますが、その他、鶏の軟骨には、Ⅱ型コラーゲンが含まれています。このⅡ型コラーゲンは、免疫力を上げてくれる働きを持っています。
牛肉
牛肉はたんぱく質を豊富に含み、脂質も多いため、他の肉に比べてカロリーが高いのが特徴のひとつです。
カロリーだけについ注目してしまいがちですが、亜鉛や鉄分(体内に吸収されやすいヘム鉄)、また、ビタミンB郡もたくさん入っているのも大きな魅力。豚・鶏と比較して、亜鉛は約2倍、鉄分は約3倍、ビタミンB12は約4倍以上。 亜鉛は味覚を正常に保ったり、皮膚や健康維持を助けます。 鉄分は赤血球をつくるのに必要な栄養素で、不足すると疲れやすくなることで知られています。ビタミンB12は赤血球中のヘモグロビンを作り出し、脳神経への信号を活発にする役割も担っています。
豚肉
ビタミンB1の宝庫。豚肉。それは牛肉の約10倍含まれているそうです。ビタミンB1は、糖質をエネルギーへと変換する働きがあり。夏バテに有効と言われています。ビタミンB1は、皮膚や粘膜の健康維持もサポートします。
※生の豚肉は、衛生管理上の観点から、必ず加熱してから与えてください。
注目食材、鹿肉
高級ジビエとして、フランス料理店などで提供されることの多い鹿肉。今、鹿肉に含まれる栄養が愛犬家の間で注目されています。鹿肉には豊富な鉄分が含まれているのが特徴で、他の種類の肉と比べても、その優れた内容に舌を巻きます。
野山を駆け回り、木の実や季節の果実を食す鹿。その鹿からとれる肉は、高タンパクで低脂肪、その上、鉄分量が多いことも魅力ですね。
愛犬の体力を作るのに必要なタンパク質に加え、脂肪を燃焼させるのに欠かせないビタミンB2、細胞を活性化する亜鉛、神経機関に影響を与えるB12といった、バラエティ豊かな栄養素の宝庫です。
例えば、豚ロース肉と鹿肉を比較してみると、鉄は約10倍の含有量を誇り、亜鉛は約2倍、リンは同程度含まれているということです。鹿肉なんて…と、なんだか身近に感じられないかもしれませんが、現在ではネットショッピングなどで、質の良い鹿肉が手軽に取り寄せることができるとあって、人気です。
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鉄
女性が特に意識している「鉄分」。犬も関係があるの?と、不思議に思われるかもしれませんが、犬にとっても鉄分は大事な栄養。ダイエット中の愛犬や、手術の後、月経中には欠乏してしまうこともあります。
亜鉛
つやつやでハリのある皮膚や、ふんわりモコモコとした被毛の維持に必要な栄養と言えば、「亜鉛」。肝機能をアシストする役割もあります。
リン
カルシウムやマグネシウムの働きをサポートする「リン」。相互効果を遂げながら、愛犬の骨や歯を丈夫にしていく機能を持ちます。また、エネルギーを体内に貯蓄するために必要です。
カルニチン
鹿肉に多く含まれる成分「カルニチン」。これはアミノ酸から合成される物質です。注目すべきはL-カルニチンに含まれる、脂肪燃焼を促進する機能についてです。脂肪を燃えやすくしてくれるため、ちょっとこのごろ肥満気味かな?と思ったワンちゃんには、特に役立つ機能性成分と言えます。
コエンザイムQ10
ヒトのサプリメントでその名前を聞いたことがある方も多いかもしれません。「コエンザイムQ10」は、認知症のリスクを減らすなど、アンチエイジングをサポートする機能性が有名です。鹿肉には、このコエンザイムQ10が、豚、鶏の2倍以上含まれています。
オメガ3脂肪酸
魚やオリーブオイル、亜麻仁油に多く含まれる「オメガ3脂肪酸」には、ドコサヘキサエン酸(DHA)、α・リノレン酸、エイコサペンタエン酸が入っています。また「オメガ6脂肪酸」に含まれる、リノール酸、γ~リノレン酸、アラキドン酸。実は、この両方が一緒に摂れる肉としても、鹿肉は重要な食材です。共に抗酸化物質が豊富で、栄養価の高い鹿肉は、ヒトのアスリートからも注目されています。
栄養と嗜好性の関係
鹿肉は犬の健康維持に欠かせない、必須アミノ酸が豊富であることや、犬たちの好む強い香りを持つため、嗜好性が高い肉と言えることができます。ただし。これには正しい処理を行うことが大事ですから、清潔な工房や、鹿肉の処理知識に長けた方のいるお店から購入するのが良いでしょう。
いつものフードにするもの良いでしょうし、また、食欲が最近落ちてきたな、疲れやすくなってきたかも。といった際にはトッピングとして与えてみるのもひとつの手です。
また、鹿肉の持つ独特の強い香りに興味を持つ愛犬も多いですから、その嗜好性の高さを利用して、しつけのご褒美としてお使いになる方もいらっしゃいます。
アレルギー対策
鹿肉などのジビエは、愛犬のアレルギー対応として使う場合があります。この考え方にはいろいろな意見がありますが、この考え方は、犬がまだ食べたことのない食物(新規、新しい、めずらしい)を与えることで、それまで起きていたアレルギー反応を抑えるという切り口の考えです。
鹿肉は野生動物なので、食べるものは当然、自然界の木の種や果実。合成保存料など添加物を含む餌を食べていないという理由からも。そうした育った鹿肉を犬が食すことで、アレルギーが出にくい肉として注目されています。
疲れやすい、体が冷えやすい体質、または活発で運動量が多い愛犬にもおすすめです。
もちろん体が弱っているときは食事の消化の負担も減らした方が良いので、鹿肉をどっさり与えることは避けてくださいね。
SDGsとしての観点
私たちヒトは、限りある命をもらって、自らの命をつないでいます。日本では鹿は害獣としてたくさん駆除されますが、その大部分は利用できずに廃棄されていました。しかし、昨今のジビエ肉への関心の高まりが、捕獲の方法や衛生管理のルールを、これまでよりもさらに明確な方向へと導いています。
まとめ
さて、いかがだったでしょうか。犬に必要な栄養素をお伝えしてきました。現在では品質の良いドッグフードの流通に加え、ある程度成犬になったタイミングで、手作り食に切り替えるご家庭も増えてきました。たくさん与えたいタンパク質としての肉を選ぶとき、ヒューマングレードで使いやすい品質にこだわった「鹿肉工房」の鹿肉シリーズは、おすすめです。愛犬の食事に取り入れて、健康を維持してみて
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